ライブコマースの普及に伴って、取り扱う商品は幅広くなってきています。今や商品は、形のあるいわゆる「モノ」ではないものも出てきています。この記事ではその中の一つ、不動産を商品としたライブコマースについて紹介します。実際の事例や今後の可能性をライブコマースの特徴と併せて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ライブコマースと不動産は、あまり近いイメージのない人が多いでしょう。しかし、この2つを結び付けた事例はあります。まずは実際の例を見てみましょう。
2021年、中華圏へ日本の不動産を販売するプラットフォームを運営する株式会社神居秒算は、ライブコマースでの不動産販売を始めました。主に中華圏の投資家に向けて、投資用の不動産を販売しています。日本の不動産エージェントが中国語で物件の紹介をするため、来日して内見しなくても詳細を知ることができ、分からないことを質問することもできます。投資家の安心や信頼を得ることのできる仕組みといえるでしょう。
また、AIを用いた事業やライブ配信事業などを行う株式会社comiproは、不動産投資のライブコマースのサンプル映像をYouTube上にアップロードしています。リスナーは配信を見ながら不動産を購入できるように設計されています。サンプルであるため、実際に不動産を販売しているわけではありませんが、このような形のライブコマースの需要が高まってきていることがうかがえます。
最近は、オンラインでの物件の内見も珍しくなくなってきました。あえてライブコマースを使うことでどのような意味があるのか、見ていきましょう。
ライブコマースを使う一番のメリットは、視覚的に知りたい情報を得られるため、リスナーの満足度の高い内見を提供できる点です。さらにリスナーはライバーに質問ができるため、見たい場所を見せてもらったり、知っておきたいことを質問したりすることができます。ライバーにとっては、一度に大人数に向けて配信できるため、効率よく伝えることができるでしょう。
それではデメリットにはどんなものがあるでしょうか。一つひとつ違う物件を紹介していく形であれば、購入は早い者勝ちとなります。不動産の購入は動く金額も大きいため、良い条件の商品が早い者勝ちであればリスナーに不平等感を抱かせてしまう可能性があります。
不動産は、投資用のほかに居住用のものもあります。この場合の内見にライブ配信を使うことも大いに役立つでしょう。しかし賃貸物件の場合は、良い条件のものであれば入学・就職シーズンには希望が殺到するため、やはり早い者勝ちとなってしまいます。
これらのメリットとデメリットから、不動産のライブコマースは以下のような場合に向いていると考えられます。
・投資用物件の内装を比較検討したい
・内装のイメージを知って引っ越し先を決めたい(賃貸物件など)
・内装のイメージを固めて、マイホームを注文する工務店・ハウスメーカーを決めたい(新築)
不動産物件は「モノ」とは違い、大量生産ができないものです。同じような部屋が大半の分譲マンションでも、立地などの条件が良ければ内装に関係なく希望が集まるものです。
時間に余裕があって、しっかりと内装を見て決めたいという人に向けたライブコマースを行えば、早い者勝ちによる不平等感も解消されるでしょう。また、直接商品を販売する目的ではなく、相談のきっかけづくりを目的としてライブコマースを行うことも一つの方法です。
ライブコマースと不動産を掛け合わせた例はまだ多いとはいえません。しかし、直接売上に繋がらなくても、販売促進の手段の一つとしてライブコマースを使うことは大いに「あり」といえるでしょう。ライブコマースは、商品や目的などのアイディア次第でうまく使うことができます。
不動産に限らず、「ライブコマースとは縁遠いな…」と思っている人も、自分や会社の持ち味や商品をライブコマースと結びつけられないか、一度考えてみるといいかもしれません。